現在に至るまでを細かく書いたシリーズもの。
不思議体験やいかに!
(この辺から、過去と現在が一気にリンクしていきます)
*******
引っ越し作業が終わり
いつも通りの、生活に戻った頃でした。
* 北海道最後の家にいた男② *
当時はまだ、母様も週に数回はパートに出ており
午前中の家には、私と息子の2人。
晴れた日の朝、静かに目を覚まし
ボーッと天井を見つめた次の瞬間
男の声
「グウェェェェェ」
と今までに聞いたことのないような声質の、男のうめき声がしました。
愛美
(……声、やんな、今の)
驚きに、思わず、体が固まりました。
声のボリュームから距離を測るに、同じ室内、それも半径30㎝以内。
愛美
(声やとしたら、至近距離。右側。でも、見当たらへん…んー、外の工事の音かな?)
外では、道路の、補修工事が行われていて、窓をしめていても煩かったのです。
とにかく、恐怖が勝ってしまうと、弱気になるので
息子を抱き締めながら、努めて冷静に考えていました。
愛美
(気のせいにしておこー。起きて、窓を少し開けて、TVも付けて、ご飯に洗濯!大丈夫!)
幸い天気もよく、全ての部屋に、陽射しが行き届いていたんです。
愛美
「息子くーん。おはよー!起っきして、ご飯食べようねー」
まだ、言葉も話せない息子に、私は懸命に話しかけていました。
数十分後には、朝食も終わり、洗濯を干すため、心配ながらも息子をベビー布団に寝かせ、
お風呂場にある、洗濯機から、洗い上がった、洗濯物を、取り出そうとしたときです。
男の声
「グウェェェェェ」
再び!
あの男の声が、左耳元で聞こえました。
愛美
(こいつ!私が霊感あるって気づいとるな!!それより…息子くん!)
私には、恐怖心もありましたが、何よりも、息子の安否が気になり
洗濯物を、放り出したまま、リビングで寝ている、息子の元へ走りました。
そこには変わらず、ニコニコとした顔で、布団に寝転がっている息子。
愛美
「よかった…無事や」
ホッと、安心したのも、束の間で
息子を抱き上げた瞬間、背後に気配を感じました。
私の後ろを付いて歩いているのです。
腹ただしさと、恐怖と、息子を護らなくてはいけないという、複雑な心境のなか、心の中で男に話しかけました。
まさに一触即発。
私の緊張感は、頂点でした。
※坂本は怒ると、非常に言葉が汚くなります。
愛美
(おい、後ろのおっさん。テメェ聞こえてンだろ?人の後、くっついて歩いて楽しいか?何がしてぇんだよ)
男
〔……。〕
返事はなく、続けて話しかけました。
愛美
(無視してんじゃねぇよ。あんた、死んでんの、自覚してんだろ?さっさと上がれよ。ここは今、私の家だ。未練残してたって何にもなんねぇよ)
男
〔……。〕
相手からは何の応答もなく、無言のままで、私の後ろを離れました。
緊張が、少しだけほぐれて、そっと息子の顔を見ると、スヤスヤと寝ています。
愛美
(…この子、私の力を受け継いでるはずやのに、呑気に寝てる。怖くないんやろか)
私には、息子が能力を、受け継いでいることが、解っていました。
性格もよく似ており、思春期を過ぎるまでは
能力の制御が、本人だけでは、難しいであろうことも。
そんなことを、ぼんやり考えていると
母の寝室から物音が聞こえました。
何かが床に落ちた音。
母の寝室は、私が内覧のときに、焼死体の痕跡を見た部屋です。
愛美え
(家の中、歩き回っとるやん。しかも物落とすなよ。どないしょー、これ、早くなんとかせんと、落ち着かんなぁ)
息子をギュッと抱き締めたまま、リビングのコタツで横になると
男は私の隣までやって来て、ジッと顔を覗き込みます。
愛美
(近い、近い、近い!見すぎや!離れろ!触ろうとすんな!冷気出とるわ!)
時刻は午後12時過ぎ。
母が帰ってくるまで、残り2時間。
そして、その内の、約30分間。
コタツの中で、攻防戦を続けました。
金縛りに合ってるわけでもないのに、動けない。
そして、私の顔付近だけが、異常にヒンヤリしていて
息子は変わらず、私に抱かれたまま寝ている。
愛美
(母さん!お願い!早く帰ってきて!)
その瞬間!
母
「ただいまー!」
玄関の戸が開き、母の声がしたのです!
続く!